私が資格を取得した日本ライフオーガナイザー協会のライフオーガナイズは、土台の考え方にニーチェの言葉を英訳した
This is my way.
What is your way?
THE way does not exist.
があります。ひとそれぞれやり方は違って、唯一の正解はない、ということです。
そう、人それぞれやり方は違うのです。
ライフオーガナイズとは「物や空間だけではなく、暮らし・人生を最適化する考え方と手法の総称」で、ライフオーガナイザーの私は具体的には「空間や暮らし、人生を俯瞰し仕組み化する、最適化する技術」を使ったサービスをお客様に提供しています。
私はライフオーガナイザーとしてこの10年、様々なお客様に接している中で時代はどんどん変化して「自分に合うやり方」を見つけている人は増え続けていると感じます。
自分に合ったやり方さえ見つかれば、きっとどんどん自力でも片づき、部屋だけではなく人生が整うと実感しています。
今日は、そんな背景から自分に合った基準を探すヒントになりそうな、世界中の片づけメソッドと判断基準を10つ紹介していきたいと思います!
1. スウェーデン式「デス・クリーニング(Döstädning)」
概要:
人生の終わりを見据えて、「残された家族の負担にならないように持ち物を整理する」という発想から始まった考え方です。少し日本の生前整理に似ていますね。若い世代でも「必要最低限のものだけを持ち、身軽に生きる」という目的で取り入れられることがあります。
判断基準の例:
- 「家族に残したいかどうか」
- 後の世代にとって価値や思い出があるか。
- 残された人が困らないか
- 「自分の生活を本当に快適にするか」
- 余分なストレスを生むものは手放す。
私のクライアントの中にも、50代以降の方は「子供に大変な思いをさせたくない」というのが判断基準の方がいらっしゃいます。
特に実家の片づけ経験がある方はそう感じる傾向にありますね。
2. アメリカ式「ミニマリストの90/90ルール」
概要:
ジョシュア・フィルズ・ミルバーンとライアン・ニコデマスによるブログ「The Minimalists」に書かれて広められたシンプルな基準。
判断基準の例:
- 90/90ルール:「過去90日間に使ったか? これから90日以内に使う予定があるか?」
両方ともNOなら手放す候補に。 - ライフスタイルとの一致:自分の価値観や暮らし方に合わない物は手放す。
最近では「ミンズゲーム」とも呼ばれている1日目に1つ、2日目に2つ、3日目に3つ、というように1か月(30 or 31日間)、日付の数だけものを手放すゲーム方式の手放しも流行させていましたね。
日本では1年使っていなかったら…がよく出てきますが、90日の方がより厳密に「今使うか」と向き合えそうです。
- Essential: Essays by The Minimalists (English Edition) Kindle版
英語版 Joshua Fields Millburn (著), Ryan Nicodemus (著)
3. アメリカ式「4つの箱メソッド(4-Box Method)」
概要:
持ち物を大まかに4つのカテゴリに振り分けることで、要不要を仕分けする方法。
判断基準の例
- Keep(残す)
- Donate(寄付/譲る)
- Sell(売る)
- Trash(捨てる)
これらの箱を用意して仕分けることで、必要なもの・不要なものが明確になります。
映画トイストーリーズでも4つに分けていましたね。
ただ「手放す」ではなく、寄付と売るが最初からあるため「誰かが使ってくれる」安心感から手放す判断がしやすくなります。
もちろん、何を残すのか?それが最大の判断ポイントですが。
4. スウェーデン式「ラーゴム(Lagom)」の考え方に基づく片づけ
概要:「やりすぎず、足りなさすぎず、ちょうど良いバランス」という意味のスウェーデン語“Lagom”に基づいたライフスタイル。日本語でいうと「身の丈にあった暮らし」という感じですが、どちらかというと「ちょうどいいから快適」、「無理をしないから心地よい」というポジティブなニュアンスのようです。
判断基準の例:
- 「過不足なくちょうどいいか」
- 無理に減らしすぎたり、増やしすぎたりしない。
- 「ストレスを減らす」
- 物が多いことで生じるストレスをなくし、心地よい生活を重視。
スウェーデンは物の循環システムができあがっており、捨ててしまうことは少なく、ほとんどの不用品は無料でリサイクルショップに流れるそうです。過不足なく買い、保つ。必要ないものは、ゴミになるわけではなく、誰かのもとへ行く。それが浸透していれば、ずいぶん生活は楽そうに感じます。
余談なのですが、アメリカでもスウェーデンでもプレゼントも返品ができます。このシステムを私は日本にも取り入れて欲しいです。
- Lagom: The Swedish Art of Balanced Living (English Edition) Kindle版
英語版 Linnea Dunne (著) 形式: Kindle版
5. ドイツ式「オルドヌング(Ordnung)」の精神
概要:
ドイツ語の「オルドヌング(秩序、整頓)」は、無駄なく効率を重視する考え方。英語でいうOrderという単語で、規律を含むニュアンスですね。
判断基準の例:
- 「秩序立って整理整頓されているか」
- 常に物に定位置があり、管理できる状態か。
- 「機能的に活用できているか」
- 故障や使わない物を溜めこまず、必要な物だけを残す。
調べていくと「Gemütlichkeit(ゲミュートリヒカイト)」という、「くつろいで安心できる心地よさ」とか「ストレスフリーで安心していられる状態」のためにOrdnungが不可欠という考え方があるようなので、単に効率化のために秩序、整頓した状態を得ようとするのではなく、その状態があるから安心して過ごせるということのようですね。
6. 日本式「断捨離(だんしゃり)」
概要:
やましたひでこ氏が広めた、ヨガの「断行・捨行・離行」の思想に基づく整理術。
断:新たに手に入りそうな不要なものを断る
捨:家にずっとある不要な物、今使わない物を捨てる
離:物への執着から離れる
判断基準の例:
- 「今の自分にとって本当に必要か」
- 使わないのに執着している物があれば思い切って手放す。
- 「物の存在がストレスや義務感になっていないか」
- “持っているだけ”になっているものを減らし、心と空間のゆとりを作る。
本当に必要不可欠なものだけを所持しようとする「ミニマリスト」と一見似ているように見えますが、所有物を「最小」化しようとするミニマリストと、「最適」化しようとする断捨離は、別だとされています。
- 人生を変える断捨離 単行本(ソフトカバー) – 2018/2/22
やましたひでこ (著)
7. 日本式「こんまりメソッド(KonMari)」
概要
近藤麻理恵氏(Marie Kondo)提唱のメソッド。主に「ときめくかどうか」を基準に残す・捨てるを決める。
判断基準の例:
- 「ときめき(Spark Joy)」
- 物を手にとってみて、心が喜ぶかどうかで判断。
- 「物への感謝」
- 不要品にも“役割を果たしてくれてありがとう”の気持ちを持ちつつ手放す。
本のタイトルからも「ときめき」の印象が先行していますが(それがもちろん差別化でもあるのですが)、実際に物に手を付けるまでの考え方、片づけの目的などは他の方法と共通していて「自分の人生をよくする」ためですし、判断の他にも洋服をキレイに畳む方法など日常生活で参考になるアイディアがたくさんありますね。
- 人生がときめく片づけの魔法 改訂版 単行本 – 2019/2/14
近藤麻理恵 (著)
8. 「1 in, 1 out」ルール(欧米中心)
概要:
新しく何かを買ったら、同じカテゴリの古いものを手放すというシンプルなルール。
判断基準の例:
- 物理的な収納スペースを守るため、同じスペースの範囲内で数を一定に保つ。
- 定数・定量管理により、持ち物の総量をコントロールする。
これは日本でもよく言われていますが元々は欧米で流行しました。いくら捨てても同じだけ購入していてはいつまで経っても物は減りません。
適切量を見極めたら、1in 1outを徹底することで、物の量をコントロールすることができます。
新たになにかを購入したら、家の中で優先順位が低いものを探して手放します。
9. 「エッセンシャリズム(Essentialism)」的アプローチ
概要:
著書『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)で紹介されている、自分にとって「最も大切なこと」に集中し、それ以外を手放す考え方。
基本的な考え方は、
- 選択…時間とエネルギーの使い道を選ぶ
- ノイズ…雑音やムダなものを省く
- トレードオフ…どちらかを優先する一方でどちらかは犠牲になる
そしてその方法は、
- 見極める
- 捨てる
- しくみ化する
判断基準の例:
- 自分の価値観・優先順位と合致しているか
→100%必要だと思えないなら手放す。 - 成果や幸福に直結するか
→無駄を極力排除し、時間とエネルギーを本当に大切なことへ注ぐ。
エッセンシャル思考の本を読んだ時に、私はライフオーガナイズの考え方とすごく似ていると感じました。エッセンシャル思考の方が、少し語感が「硬い」感じではありましたが。
ただその中で、トレードオフについて明言しているところは私には少し衝撃的でした。暮らしの中だとまぁまぁ許せる落としどころ「妥協点」を探ることが多かったからです。
片づけにはもちろん、それ以外にも効く思考法なので、まだ読んだことのない方はぜひ。
10. アジア圏「風水(Feng Shui)」の視点
概要:
中国や香港などを中心に、家のレイアウトやインテリアだけでなく持ち物も「気(エネルギー)の流れ」を整える基準。一説によると、土着のものなので日本には日本の風水があるそう。
判断基準の例:
- 気の流れを阻害しないか
部屋に物が多いほどエネルギーが滞ると考えられる。 - 色や素材の縁起
幸運を呼ぶ色・素材であるかどうかを重視。 - 適切な場所に適切の物を配置
宗教、風水、スピリチュアル。こういった視点から物の取捨選択をする方もいますね。片づけ本の中でも初期に出ているこちらの本でも、こういった視点が用いられていました。
- 新 ガラクタ捨てれば自分が見える (小学館文庫) 文庫 – 2013/10/8
カレン キングストン (著), 田村 明子 (翻訳)
いかがでしょうか。
色々な基準がありますよね。皆さんにしっくりくる考え方はありましたか?
そのほかの視点・基準として考えられるものを最後にいくつかお紹介します。
- 経済的基準:
維持費・修理費がかかりすぎるものは手放す
不必要に保管コストを生むものを見直す - 社会・環境的基準
寄付・リサイクルが可能か
サステナブルな暮らしに寄与するか - 美学・デザイン的基準
空間のトーンやスタイルとの調和
自分が居心地よく感じるか
世界の片づけメソッドのまとめ
世界各地には様々な文化、片づけ方法、物の要不要を決める基準があります。日本発の方法の中にも「こんまりメソッド」や「断捨離」が世界的に知られるようになっていますね。
効率的、無駄を省くことがストレスフリーという考え方、過不足持つことが当たり前という考え方、そして日本ではこれまでにも指摘されていますが少し精神世界的なエッセンスも入っている方法が世界的に知られています。
また「ミニマリスト」もアメリカと日本では違う発展の仕方をしているので、様々なやり方がさらに違う国の文化で解釈されて、違う形に変化しながら今後も発展していくと思います。
いずれの方法論でも、「自分にとって必要か」「それを持つことが自分や周囲にとってプラスか」を軸に考えることが大切です。
ぜひ自分にしっくりくる複数の視点を取り入れて、ご自身に合った整理基準を作ってみてくださいね。
え?私?私の判断基準は基本的に「めんどくさく感じる物は手放す」一択です(笑)
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