はじめに:「物を減らしたい」と感じるあなたへ
あなたは、「物を減らしたい」「物を減らすと楽になるはず」と感じていませんか。
その心境の変化こそ、これからの暮らしを変える第一歩!
ただ単に何を捨てればいいかという「整理術」ではなく、心理の理解、そこから実践、成功体験をつなげて習慣化することで、本当に“楽になる「一連の片付け行動」が可能になります。
この記事では、なぜ「物を減らしたい心理」が生まれるのかを探り、実践すべき具体的なコツ、そして物を減らすことで得られる心身への効果について、科学的・心理学的な根拠を交えてご紹介します!
1. 「物を減らしたい心理」を理解する
「物を減らしたい」と思うとき、そこには個人の価値観や心理的な背景が必ずあります。
無理に捨てようとしても続かないのは、気合いやテクニック以前に“気持ち”が整っていないから。
これは例えばSNSで物が少なく素敵な暮らしの人に憧れているだけで物を減らそうとしているなど、表面的な動機の時に起こりやすいです。まずは、自分自身の心の動きに目を向けてみましょう。
物を減らしたいけど減らせないのは、安全・安心欲求と執着心
人が「物を減らせない」とき、多くの場合「まだ使える」「高かった」「思い出があるから捨てられない」といった考えが脳裏をよぎります。これらは多くの方が持つ、安心や安定を求める人間の自然な心理。
例えば、使っていなくて減らそうか迷う時でも「まだ使える」とか「捨てられない理由が思い浮かぶ」のは、
- 買い物行動の正当化=買って失敗したと認めない
- 不安回避=万が一使いたいと思った時も安心
- 損失回避=人は損を嫌うため、捨てる=損失=捨てるのはもったいないと考える
- 文化的刷り込み=もったいないは日本人の文化的。道徳的な価値観、行動規範
- 自分を否定しない=自分の買い物行動が失敗していない証拠(自分を否定したくない)
- 罪悪感の回避=捨てることで、環境負荷や無駄遣いへの罪悪感が湧くのを避ける
このように、私たちは“物”を通じて自分の過去や不安をコントロールしようとしているのです。
また「高かったのに…」と思うのも、実際の金額以上に私たちは「所有バイアス」があり、自分が一度所有したものは、それだけで価値が高いと錯覚してしまうために余計手放しにくくなります。
さらに人によっては、 自分のアイデンティティの一部として物を感じる人もいます。
あまりにもその思いが強くなると、それは物に対する「執着心」。
自分でその物が大切な理由をどんどん考えてしまい、執着が強くなってしまいます。
物を減らすことで、自己効力感の影響
一方、「物を減らす」という行動は小さな成功体験の積み重ねにもなります。
自分で何をするか決めて引き出し一つでもスッキリさせることができたら、「自分にもできた」と感じられ、自己肯定感や“自己効力感”が育っていきます。この感覚が新しい暮らしや自己イメージの構築にもつながるのです。
自己効力感とは、「自分には、ある状況で必要な行動をとる力がある」という信念のこと
物を減らすという行為は、たとえ1つの引き出しであっても、「自分で判断して選ぶ」⇒「実行する」⇒「結果が見える」という一連の成功体験が得られる行為です。
「これを手放しても大丈夫だった」
「迷っていたけど、選べた」
「片づいたことで、安心した・嬉しかった」このような体験を繰り返すことで、「自分にはできる」「選べる」という自己効力感が育ち、他の行動(スケジュール管理、人間関係、仕事など)にも波及していきます。
だからこそ、物を減らしたいなら「目指すゴール」を最初に決めよう
実際に片付けに取りかかる前にやっておきたいのが、「自分が目指す暮らしのゴール」を明確にすることです。
最近では「ミニマルでスッキリ暮らす」「おしゃれに整える」などが流行ですが、目指すゴールは人それぞれでいいのです。
例えば、
- 物の場所がわかりやすいようにしたい
- 手の届く範囲に必要な物をまとめたい
- 掃除を楽にしたい
- 見た目の整った収納で気分を上げたい
- 家事を時短できるようにしたい
- 家族全員が物の場所を想像できるようにしたい
といったように、人によって様々なゴールが考えられます。
大切なのは、「他人が良いと言っている形」ではなく「自分にとっての心地よさ」を言葉にすること。人によって、物を減らしてスッキリさせたい人もいれば、大好きな物に囲まれていた方が幸せな人もいます。
そのため、他人軸ではなくて自分がどうしたいかを考えます。
物に囲まれていたいけど、モヤモヤする場合はもしかしたら配置を変えるだけでいいのかもしれませんよ。
紙に書き出してみると、頭の中が整理されて、物を手放す判断もスムーズになります。
2. 実践!「物を減らす」ための3つの具体的コツ
「物を減らしたい」と思っても、実際には「迷い」が多く、行動に移すのが難しいものです。片づけが苦手と感じる人は、表現する言葉は違えど「わからない」「迷う」が多いです。
ここでは、まずは家全体を整えるような大掛かりなことをする前に、自分1人でも行える心理的な視点から実行しやすい3つの方法をご紹介します。
すべてに共通するルールとしては、自分で決めて、実行する、です。常に「自分で決める」ことが大切です。
① 使い切ってから買う——「使い切るまで買わない修行」
(私は飽きやすく、気持ちがうつろいやすいので「修行」とよく感じるのでそう表記します)
ストックを買いすぎてしまう、調味料や文房具が増えすぎる…こんな傾向に効果的なのが、「今あるものを使い切るまで買わない」という単純なルール。
この習慣は「無意識の買い物」や「どうせ使うものだから買っておこう(からの、飽きたり別の物を使い始めて結局使わないパターン)」を防ぎ、物をむやみに増やさない効果があります。
これは今だからこそ、ミニマリストや片づけのプロも言っていますが、元々片づけが上手な人たちは教わらなくても当たり前に実践していることです。
いつものクセで、買いそうになった時に一度手をとめて「まだ使っているのあるんじゃない?」と自分に問いかけてみましょう。無理なく始められる第一歩です。
② “お気に入り”だけ残す——いつもと違う目線でフィルタリング
普段「使えるか」「使うか」「いるか」で判断しようとしているなら、「自分が好きかどうか」で残すかどうかを判断するのも一つの方法です。
私たちはつい「いつか使うかもしれない」と考えてしまいがちですが、「本当にすべての要素で完璧に気に入っているもの」だけを残すと、持ち物への満足度が一気に上がります。
数が少なくても、「選びやすい」「気分がいい」という感覚が得られ、暮らし全体が整っていくのです。
実際には、家の中すべての物をこの状態にするにはきっと長い年月が必要だと思います。家の中1つ1つの物を確認してみると、やっぱり何かしら妥協して持ち続けいている物が多いことに気付きます。
それらを一気に手放せとは言いません。
まずは1つ1つの物のどこを気に入っているのか、どこに妥協を感じているのかを言葉にすることでだんだん自分のこだわり=基準=価値観が見えてきます。
③ 物との付き合い方を見直す——心理的な捉え方
「減らす」「捨てる」という行為にストレスを感じる人は、物との関係性」を見直すことから始めてみましょう。
思い出の詰まったもの、大切な人からの贈り物、手に入れるのに苦労した物…。
それぞれに意味があるからこそ、「今の自分にとって必要か」「これからの暮らしに合っているか」という視点で再評価することが大切です。
これは人間関係と似ていると思います。例えば、幼稚園の頃から出会った人全員と大人になってからも等しく関わり続けている人はなかなかいないでしょう。
もっと言うと、関わった人全員を覚えている人もいないでしょう。
その時々の環境、ライフスタイルによって関わる「人」は変わってきます。
人と物はまったく同じではありませんが、物もその時の環境やライフスタイルによって自分との関係は変化します。
時には「私がその物を必要か?」ではなく、「この物は私を必要としているか?」という逆の発想をしてみてもいいですね。
3. 「物を減らすと楽になる」—その効果を科学的に見る
「物を減らすことで暮らしが楽になる」とか「物を減らすと人生が変わる」とよく言われますが、実際にはどんな効果があるのでしょうか?科学的な視点からその理由を見てみましょう。
ストレスホルモンの減少
米国のUCLAの研究によると、特に母親は物が多く散らかった空間に対しうんざりした感覚を覚え、ストレスホルモン「コルチゾール」が慢性的に高くなる傾向があるそうです*!(ただし、その空間の散らかりに意識が向かない人についてはストレスホルモンの上昇はない)。
また、女子大学生が通常の環境と散らかった環境で乳児の世話をする状況を実験的に作った研究では、散らかった部屋では女性の身体的ストレスレベルが依然として高かったことが分かりました*2。
逆に、片づいた空間では気持ちが落ち着き、不安が減り、心身のストレスが緩和されやすくなるという報告もあります*3。
脳の情報処理がスムーズに
人間の脳は「散らかった視覚情報」を処理するのに多くのエネルギーを使います。
例えば、特定のタスクとは関係のない物体によって人の視覚野が埋まってしまうと、集中力が低下し、プロジェクトを効率的に完了することが困難になることが研究でわかっています*4。
これまでの実験室的環境では、数多くの研究でこのような事実が明らかになっているため、日常生活においても空間がゴチャゴチャしていると、脳は常に“ノイズ”を受けている状態。
物を減らし、視界に入る物を減らすことでこのノイズが減り、集中力や創造力が高まると考えられます。
自己肯定感の向上と前向きな思考
片づけによって「自分で自分の身の回りを整えられる」という感覚が得られると、単なる環境美化ではなく、自己肯定感や幸福感が上がる可能性があることが心理学研究でも示されています*6 。
さらに、整理整頓によって得られる「視覚的なスッキリ感」「完了の達成感」などは、その他の行動と同じように脳の報酬系(特に側坐核)を刺激し、「やる気ホルモン」「報酬ホルモン」と呼ばれるドーパミンの分泌を促すことが分かっており、前向きな気持ちを保ちやすくなります*5。
4. 「上限量」や「期間」を決めて、迷いを減らす
「物が多くて減らしたい」と思っても、すぐには手放せない…。そんなときに役立つのが、「保留する量や時間に上限を決める」という方法です。
〈上限量を決める〉:例えば、写真・手紙・子どもの作品は「ボックス2個まで」など
〈期間を決める〉:半年/1年使わなかったら手放すなどのルール
このように、事前にルールを設定しておけば、迷った時も“感情”ではなく“ルール”で判断できるようになります。このルールは、必ず自分で決めましょう。
判断に迷う物は「保留ボックス」に入れ、定期的に見直す方法もおすすめです。
上限量を決めるのは、私たちの住居スペースは無限に増築していくことができないからです。また、期間を決めるのは私たちの生きている期間も有限だからです。
いつまでも「物を減らすにはどうしたらいいだろう?」、「物を減らしたい」と思いながら生きるよりも、すっきりと自分で期限を決めて決着をつけ、やりたいことをやりながら生きていきませんか。
5. 実践しよう:物を減らすには、まずこの一歩から
最後に、「物を減らす」行動を実際にスタートさせるためのシンプルな5ステップをご紹介します。
ステップ① 気持ち、感情を認める
「私は物を手放しにくい」とまずは受け入れることから始めましょう。その際に「手放せない」ことに罪悪感を感じる必要はありません。「安心したいから残していたんだな」などと、自分の感情を客観視することが大切です。
ステップ② ゴールとルールを決める
どんな暮らしをしたいのか?そのゴールをイメージしましょう。朝起きた時の気分、見える景色、そこからどのくらいの時間で何をして過ごすのか…?1日の流れを、見える景色や感情、五感を使って想像してみましょう。
究極は、その暮らしの中だけにあるものを選ぶことで物を減らせます。
ただ、人によってはこの方法は難易度が高いため、まずは
- 「使い切るまでは買わない!」
- 「100%お気に入りしか持たないようにする(買わない)」
- 「1年使わなかったら、手放す候補に入れる」
- あまり使わないものは、なぜか考えてノートに書く
など、自分に合わせてルールを考えましょう。
ステップ③ 小さな成功体験を積む
いきなり家中を片づけようとせず、引き出し1つ、バッグの中身、財布の中など小さな単位で始めてみてください。物をその場所から出して、自分の決めたルールに当てはまるか考えます。
小さなところから進めると、終わらせることができるため、その達成感が次のやる気につながります。
ステップ④ あえて効果を感じる
物が減った空間で過ごすことで、呼吸が深くなったり、疲れにくくなったりする感覚を感じ取ってみましょう!
ただ片づける行為を行って終わらせるのではなく、環境の変化、それに伴う気持ちや体の変化を感じることが大切です。
ステップ⑤ 習慣にする
月に1度の“見直しデー”を作ったり、買い物前に「今あるもので足りるか」を考える癖をつけたり、習慣化する仕組みを作りましょう。
まとめ
「物を減らす」ことは、ただ物を捨てる行為ではありません。
それは、心を整え、暮らしを自分らしくアップデートする第一歩だと思います。
片づけの流行的な理由ではなく、もし本心から「物を減らしたい」と思ったのであればその気持ちは、変わりたいという前向きなサイン。
自分の理想を描き、小さなステップを積み重ねれば、必ず暮らしは変わっていきます。
まずは、今日いまから…
紙とペンを用意して「自分が目指したい暮らし」を書き出してみてください。
そこから、あなたの“楽になる暮らし”が始まりますよ!
参考文献リスト
*1 No Place Like Home: Home Tours Correlate With Daily Patterns of Mood and Corisol (https://www.celf.ucla.edu/2010_conference_articles/Saxbe_Repetti_2010b.pdf)
*2 The causal effect of household chaos on stress and caregiving: An experimental study (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666497621000643)
*3 6 Benefits of an Uncluttered Space The psychology behind organizing and decluttering(https://www.psychologytoday.com/us/blog/in-practice/201802/6-benefits-uncluttered-space)
*4 Display clutter and its effects on visual attention distribution and financial risk judgment (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003687019300924)
*5 The Mental Benefits of Decluttering(https://extension.usu.edu/mentalhealth/articles/the-mental-benefits-of-decluttering)
*6 Home and the extended-self: Exploring associations between clutter and wellbeing (https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494421000062)
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