日本ライフオーガナイザー協会は、年に1度カンファレンスがあります。カンファレンスは会員同士が交流を深めるだけでなく、外部講師や海外で活躍するプロフェッショナルオーガナイザーを招いての講演で学びを深められる貴重な機会です。
この記事では、今年2023年のカンファレンスで得た情報・知識の中から片づけで困っている方、整理に意識がある方にも活用していただけそうな内容を(独断と偏見で)ご紹介します。
前回ご紹介したのは、アンガーマネジメント 日本ライフオーガナイザー協会は、年に1度カンファレンスがあります。カンファレンスは会員同士が交流を深 ... 続きを見る
アンガーマネジメントとライフオーガナイズ
今日は
遺品整理・福祉整理のパイオニアから学ぶ
現場のリアルと昨今増加しているデジタル遺品整理について。
メモリーズ株式会社代表取締役 横尾さんの講演です。
プログラムの概要は、
「ソロ社会」化が進んでいる日本。少子高齢化に歯止めがかからず、2025年には単身世帯が1996万世帯に及ぶと予測されています。家族や地域は希薄化が進み、孤立や無縁などネガティブな言葉が飛び交う昨今において、整理業のニーズは増加しています。
“遺品整理サービス”が市民に必要なサービスと認知される一方、家族にとって大きな負担になるとメディアで取り上げられるようになると、今度は“生前整理サービス”が世に出るようになり、終活の一端として注目を集め、需要が高まっています。
片づけには「寄り添う心」が必要です。生前整理は、終活の亡くなる準備ではなく、「長生きするための片づけ」であって欲しい。また、誰かの力や的確な助言がないと進まないことが多く、まさにライブオーガナイザーの活躍が期待されます。
本プログラムでは、現場の生の声や最近ニーズが高まるデジタル遺品について、そして寄り添う整理の素晴らしさを熱くお伝えします。
https://jalo.jp/schedule/jalo2023conference/
①片づけ、整理、収納サービスは多様化している
当サイトのコラムでも片づけサービスは多様化しており、どんなサービスをクライアントが求めているかによって依頼する先が異なることを紹介しました。
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今回の講演は、遺品整理のパイオニア企業なので、私たちライフオーガナイザーとは作業内容が異なります。遺品整理は主に
・クライアント(ご遺族)が必要な物を見つけ終わった後の仕分け、搬出、処分作業
・クライアント(ご遺族)が必要な物の指示を出した上で、それを探しつつ仕分け、搬出、処分作業
・孤独死現場の物の搬出、処分、特殊清掃
などが主な作業です。
それに対して、私たちライフオーガナイザーは
・クライアントの価値観に沿った物の仕分け、整理作業
・クライアントの持ち物、ご本人の特性、空間に合わせた収納提案
・クライアントの特性に合わせた維持方法のアドバイス
などが主な作業です。
このように遺品整理の会社さんと私たちライフオーガナイザーの仕事は異なりますが、違う業種だからこそ見ている景色が違うため、作業の情報はとても参考になります。
ちなみに今回の話題は遺品整理ではなく、生きているうちの片づけ・整理の話題が中心でした。
②生前整理は何のためにする?
横尾社長は、生前整理という言葉を使わないそうです。生前整理というと、たしかに亡くなる準備のような言葉の響き(そして「終活ビジネス」の匂い)があるので、「福祉整理」と呼んでいるそうです。
福祉整理は、加齢に伴う心身の変化を考慮した安全な住環境を整え、長生きするための片づけという意味が込められているそうです。
日本ライフオーガナイザー協会にも、シニア生活環境オーガナイザー®という専科資格があり、クライアントに合った環境を整えるための知識を習得したうえで作業をしています。
今でこそ一部のシニア世代は意識が高く、身の回りを整えていますが、世の中の大多数はまだ昭和、平成と時代をまたいで家に入れた物を大量に収納している状況があるでしょう。
押し入れや物置に収まりきってほぼ使っていない状況であればまだ危険ではありませんが、それが食器棚の中、上にまで物が積み重なり、床にも浸食してきている状態では本当に危ないです。
踏み台に乗って物を取ろうとしてバランスを崩して落下したり、高いところの物を取り損ねて足の上に落としたり、床に積み重なっている物につまづいて転倒したりして骨折・・・こんな話はよく聞きます。
生前整理というと「残された物を片づけることが大変だから、先に整理をしておいた方がいい」というニュアンスに聞こえてしまいます。でもここでも物を減らすことよりも、まずは家の中の危険な場所を失くすことの方が優先的な課題だと感じました。
③大人なら今こそ取り掛かるべき整理は、デジタル関連!
さて、この記事の本題は私たち大人が今こそ取り掛かるべき整理についてです。その対象は、物ではなくデジタル関連です。
デジタル遺品、デジタル終活が近年世界的に話題になっているので、聞いたことがあるでしょうか。
問題は要するに、日本では本人が亡くなった後インターネット上にあるモノはどうなるのか?亡くなった後のことまで対策がしっかりと取られていない、ということです。
例えば・・・
・亡くなったら、家族は故人のスマホを開けない
・亡くなったら**ドライブなどクラウド上にある情報が取り出せない
・通帳がないネットバンキングの口座がわからない
・SNSのアカウントが残り続ける?
・契約しているサブスクリプションは、ずっと課金されたまま
などなどの事態が起こり得るわけです。
海外ではすでに、アメリカの大半の州で「デジタル遺品条例(UFADAA:Uniform Fiduciary Access to Digital Assets Act)」が施行されています。まだ日本ではこのような条例はありませんが、今後必然的に整備されていくと思います。
身近な例を挙げると、Appleは2023年10月に「亡くなったご家族の Apple アカウントへのアクセスを申請する方法」を公開しました。
Apple ID に故人アカウント管理連絡先を追加できるようになりました。
亡くなった家族や友達の故人アカウント管理連絡先になっている場合、故人があなたを故人アカウント管理連絡先として追加した際に作成した一意のアクセスキーと、故人の死亡証明書*を両方とも用意した上で、自分のデバイスで直接、または「デジタル遺産 - 死亡した友人または家族のアカウントにアクセスする権利をリクエストする」ページで申請を始められます。
とあります。
試しに行ってみましたが、誰を指定するかが決まっていればその設定自体は3分もかからずに行うことができました。
ちなみにすべてが公開されるわけではなく、キーチェーンで残したパスワードなどは公開されないようです。
ただこのように、生前から本人の意思で対策を行えるデジタルサービスはまだまだ少数です。
基本的には、亡くなった後に残された人が何らかの対応をとる方が多いです。多くの場合、残された人は故人が何を契約していたのかなどすべて把握するのは非常に大変です。
実は私は片づけのプロではありますが、まったくと言っていいほどデジタル関連の整理は行えていませんでした。そして、私は仕事関係も含めて多数のサービスをサブスクで契約しています。
まだまだ死ぬ気はありませんが、万が一がいつ来るかは誰にも予測できないもの。一刻も早く、対応する必要があると感じました。
デジタル終活は、何から? 今すぐにでも家族と共有できるのは…
今すぐに家族とシェアできる大切な情報といえば、
- iphoneとPCとgmailのログイン情報、アカウントとパスワード
まずはこれさえ共有できていれば、あとの情報はなんとかなる可能性が高い。
ということで、即共有しました。
多くの場合、スマホとPCを見ればどんなサービスを利用しているかそこから辿ることができます。1つ1つのサービスを列挙するのは大変だとしても、まずはとりあえずこれらの情報を共有しておくだけでも安心です。
デジタル終活、その他大切な情報は...
その他、情報を明らかにしておくことがおすすめなのは、下記のようなサービスです。
- ネットバンク
- ネット証券
- 生命保険と引き落とし口座
- サブスクしているサービス
- SNSの種類とアカウント、死後消してほしいかどうか
- クラウドストレージのアカウント…有料/無料、仕事/プライベート
- メールのアカウント情報
- 会社関係の資料、取引先
以前行った「捨て活」では、ひたすら1日かけてメルマガを解約しました。メルマガも、ワンクリックで解約できるものもあれば、会員サイトにログインした上で解約するなど手間がかかるものもありました。意外と時間がかかります。
デジタル関連全体を考えてみると、その量も私は膨大に抱えていますのでそれを1つ1つ確認することも想像するだけで大変そうです。さらに、残したいもの、消したいもの、さらには存在すら誰にも知られずに闇に葬ってもらいたいものなど、どうしたいかもわけて考えるとなると、さらに作業量は増えていきます。
それらをある程度整理してから…となると、いつになるかわからないし、不慮の事故があるかもしれないのでまずは手っ取り早く・iphoneとPCとgmailのログイン情報、アカウントとパスワードを共有しました。
もちろん家族といえどあまり知られたくない情報もあるかもしれません。でも、万が一を考えるとそんなことも言ってられないなと思いました。
これなら、みなさんにもいつでもできますよね。
もしかしたら、今のご高齢の方はまだあまりデジタル遺品になりそうなデジタル関連を抱えていることはないかもしれません。でも私たちの世代が寿命で亡くなる頃には・・・。
これを想像すると、もし時間が限られるとしたら家の中にある物をどうにかするよりもデジタル関連の整理をしておいてもらった方がよっぽどいいのではないか…?そんな気にすらなった講演でした。
もしまだあまりデジタル遺品について知らない方がいましたら、ぜひ、デジタル遺品について考えてみてくださいね。
参考:
メモリーズ株式会社:https://www.ihin-memories.com/