片付けるのかい?片付けないのかい?どっちなんだい!?
片付けたいと思っているんだけれど。
片付けたくないと思っているわけではないけれど。
それでもなかなか片付けが進まない。
自分に対して「片付けるのかい?片付けないのかい?どっちなんだい!?」と突っ込み入れたくなる時はありませんか。もしくは、ご家族やお知り合いに対して同じように聞きたくなってしまうシチュエーションもありますよね。
そんな時には、ぜひこの記事でご紹介するポイントについて、ご自身に当てはまることはないか見直してみてください。そして、この思考パターンに心当たりがある場合は、まずは自分がその思考パターンをしていることを認識してみてください。そのうえで、適切に対応することで片付けを進めることが可能になります。
片付けたいの?片付けたくないの?相反する私たちの思い。
こんなことありませんか。
- クローゼットで幅をとっている荷物を片づけたいけれど、結婚式や旅行でのおみやげなど思い出が詰まっている…
- 捨てるのはもったいないから、メルカリで売ったりリサイクルショップに持って行きたいけれど面倒だし、寄付もコストがかかって悩む…
- 今は使っていなくて邪魔に感じるけれど、いつか使うかもと思っているから捨てられない…
- 人からもらったプレゼントが自分の好みではないから使いたくないけれど、その人の気持ちを考えると手放せない
- 写真や書類をデジタル化すればスペースを節約できるけれど、物理的に持っている方が安心感がある
私たちは片付けをしている時に、片付けを目標にしているにも関わらず例のような相反する思いを抱えることがあります。
このように同時に相反する感情や思い、意見を持つ状態をアンビバレンス(ambivalence)といいます。特に、人が同じ対象や状況に対してポジティブな感情とネガティブな感情の両方を同時に感じているときをアンビバレンスな状態といいます。そしてこのような感情の混在は、意思決定や行動選択を複雑にすることがあります。
片付けでは、上記の例のような時には結局片付けるのか、片付けないのか、手放すのか、残すのか。その意思決定、行動選択をするのが難しくなります。(経験済みの人も多いですよね!)
まずは、このように同時に相反する考えを持つことは特殊なことではなく、誰にでもあるということを覚えておいてください。(片付けに迷わない人も、日常生活の違う場面ではアンビバレンスな状況を抱えることはよくありますので。)大丈夫です。あなただけではありません。
そしてそのうえで、アンビバレンスを理解し、そのままにせずに違う角度から自分と向き合うことでより効果的に片づけを進めることが可能になります。
片付けでアンビバレンスな状態に陥ったら…
人は通常、アンビバレンスを何かしらの方法で解消しようと努力しますが、無理に解消するよりも受け入れて、向き合うことでより豊かな生活につながることがあります。
1.アンビバレンスの根源を掘り下げてみる
アンビバレンスを感じる状況を紙に書き出し、それぞれの感情や考えがどこから来ているのかを掘り下げます。例えば、片付けをしなければならないがしたくない場合、なぜその気持ちが起こるのか(疲れている、時間がない、捨てるのが怖いなど)を自問自答することで、感情の根源を理解しやすくなります。
捨てるのはもったいないから、メルカリで売ったりリサイクルショップに持って行きたいけれど面倒だし、寄付もコストがかかって悩む…、という場合には、なぜもったいないと思うのか、もったいないのは何なのか?ということを考えた後に、それぞれの手段に手間(時間などのコスト)がどのくらいかかるのかを書き出してみます。
ちなみに、この掘り下げでやらない自分が正しいと感じるような思考が出てくる場合は、それが本当に真実なのか、このコラムの次の項目をチェックしてみてくださいね。
2.感情や思考を俯瞰する
感じている感情を認め、俯瞰します。自分一人で俯瞰するのは難しいので、紙に書き出して見つめなおしてみます。もしくは、信頼できる友人や家族にそれを話してみることも有効です。感情を言葉にすることで、それがどれだけ自分の行動や考え方に影響を与えているかが明確になり、解決策を見つけやすくなります。
もしこのあたりがうまくいかない場合は、感情や思考の扱いにも精通している片付けのプロに相談してみましょう。
3.目標設定と優先順位の見直し
相反する複数の感情が交差する場面では、何が最も重要かを考え、優先順位を見つめなおしてみることも、1つの方法です。
例えば、今は使っていなくて邪魔に感じるけれど、いつか使うかもと思っているから捨てられない…という時に、毎日邪魔だと思いながら生活し続けるけれど、いつ来るかわからないいつかが来た時に手持ちで済ませられる状況と、邪魔に感じるものがなくなりすっきり暮らして、その時が来た時に再度購入する…どちらが中長期の生活を想像した時にウェルビーイングにとって価値があるかを自分で考えてみます。どちらが幸せか、それはあなたが決められます。
4.柔軟性を持って捉える
特別な状況でない限り、片付けは今すぐに決着をつけなくても大丈夫なことでもあります。片付けでは、「捨てるか残すか」的な0か100かの思考になりがちですが、アンビバレンスの状態では、一方の選択肢に固執するのではなく、状況に応じて柔軟に対応できるよう心がけることが大切です。
状況や感情が変われば、自然とアンビバレンスな状態が解決されることもありますし、これまで考えていた計画や決定も変更することが適切な場合があります。
アンビバレンスな状態にいるとなかなか片付けが進められないのは、みんな一緒です。だからこそ、こういう状況に私たちが陥りやすいことを知っておくことで、この後紹介する「やらない理由」をどんどん生み出して、自分を正当化することを防いでみてください。
片付けられなくなる原因=いつだって、やらない理由を正当化できてしまう
私たちは、片付けが必要だと感じる時や物を捨てるべきだと思う時に、なぜかそれを先延ばしにしてしまうことがあります。これは、自分を正当化できる理由を探し出すからです。
その背景には、「認知的不協和」と呼ばれる状況があります。
認知的不協和: 人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語。
アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された。
人はこれを解消するために、自身の態度や行動を変更すると考えられている。
Wikipedia 認知的不協和 参照
私たちは、自分の頭の中で矛盾する考えがある時に、それを解消するために自分の思考、態度や行動を変えるのです。
人にこういった特性があることを覚えておいた方が、自分の本音をすくいとりやすくなりますし、選択を大きく間違う可能性も減ります。
具体的には、例えば
- 家の片付けをすることを決め、すっきりとした物が散乱していない空間を目指すことを目標とする。
- しかし、実際には片付けが進まず、物が溜まる一方である。
これらには矛盾が生まれていて、「認知的不協和」があります。
この状態を解消するためにも、思考や行動を変える(正当化の理由を思いつく)のです。それはクリエティブアボイダンス(Creative Avoidance; 創造的回避)と呼ばれ、何かを避けるために創造的に言い訳やできない理由、更に優先されるタスクを考えだすことです。
・「思い出の品だから、もう二度と手に入らないし、捨てないべきだ」
・「捨てると後で必要になった時に困るかもしれない」
・「部屋が狭いから、どうせ片付けてもすぐに散らかる」
このように、思考を変えることで、認知的不協和を解消しようとします。
もちろん、何か本当に受け入れがたいような事実がある場合に、何か理由が見つかることで、少し楽になるのであればこのような認知的不協和の解消もいいでしょう。
けれど、多くの場面では認知的不協和の解消のために
- 自分に都合のいい情報だけを入手しようとする
- 自分に都合の悪い情報は、まったく無視する
- 認知をゆがませる
という方法がとられます。
つまり、誤った情報から、誤った行動を選択をしてしまったり、自分の本音から目を逸らしてしまう可能性があるがあるのです。
先ほどの例では、片付けを完了させることを当初の目標としました。
であれば、認知的不協和を解消するためにはなぜ片付けが進まないのかを分析し、少しでも効率的な片付けができるような行動に移す方が自分が望んだ結果に近づきます。
環境や状況のせいにして認知的不協和を解消したとしても、自分の希望につながる行動をしない限り結果はでませんよね。
同じようなことが、生活の様々な場面で起こっています。
やらない・できない理由は、真実でしょうか?
それとも、自分に都合のいいように事実を歪めているでしょうか?
すぐにはわからないと思いますが、いろいろな角度から理由を考えてみることで、その歪みに気づけるかもしれません。
認知的不協和の概念を理解して、何かモヤモヤと頭の中に矛盾が生じている時は、自分の思考パターンを見つめ直すきっかけに使ってみてくださいね。
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